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諸岡 聡; 徐 平光; 柴山 由樹; 佐々木 未来; 菖蒲 敬久
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輸送機器や大型構造物中に存在する残留応力は「隠れた力」とも言われ、部材の疲労破壊に大きな影響を与えるだけでなく、部材寸法の安定性も左右する。中性子による非破壊応力測定法は結晶格子をゲージ長さとして結晶による回折現象を利用してひずみを計測することから、原理的にはあらゆる結晶材料に適用することができる。2022年度において、JRR-3の中性子応力測定装置RESAでは、試料位置における中性子束強度を向上させるために、0.7mm厚の(004)Si(15枚積層)の平板型結晶を用いて、可変式2軸湾曲の集光型モノクロメータシステムを開発した。その結果、2021年度の中性子強度と比較して、およそ2倍の中性子強度を得ることに成功した。本講演では、上述のモノクロメータシステムを導入したJRR-3の中性子応力測定装置RESAの現状と自動車などの輸送機械部品や発電プラントを模擬した溶接構造物など、様々な機械・構造物の信頼性・健全性の確保や安全設計を目的とした安全・安心かつ持続可能な社会の実現に関わる重要な力学パラメータの一つである残留応力の測定例を紹介する。
土川 雄介; 甲斐 哲也; Parker, J. D.*; 及川 健一; 篠原 武尚
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J-PARC MLFにおけるBL22/RADENビームラインでは、中性子共鳴吸収反応を利用したイメージング技術(共鳴イメージング)の開発を進めている。共鳴イメージングは、エネルギースペクトル中に現れる元素固有の中性子共鳴ピークを用いることで、元素識別/弁別や、定量評価を可能にする二次元可視化技術である。MLFでは6-リチウムガラスシンチレータやHeガス等を用いたLiTA, uNID検出器を用いることで、eVからkeV領域の共鳴ピークを測定している。現在は、評価済み核データライブラリJENDLを利用した元素量の定量評価技術開発と共に、その精度向上を目的としたガンマ線バックグラウンドやパルス関数の評価も進めている。発表ではMLFにおける最近の共鳴イメージング利用例や、鉄やリチウムといった数十から数百keVに主要共鳴ピークを持つ元素の同定と定量測定に向けた取り組み等も紹介する。
長谷美 宏幸; 巽 一厳; 佐藤 博隆*; 加美山 隆*
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中性子共鳴吸収分光法による密度・温度のイメージングや中性子回折法によるひずみイメージングなどのように中性子ビームを実空間でスキャンしながら測定を行う手法について、事前に物理量の空間分布が把握できない場合には試料全体を等間隔にスキャンすることになる。しかし、対象とする物理量が分布していない領域も等しく測定してしまうため無駄が多い。また、物理量の変化の大きい部分はより細かい間隔で測定しなければ正確に分布を再現できないという問題がある。限られた測定時間の中で物理量の空間分布が未知の試料に対して効率的にイメージングを実施するために、ガウス過程回帰を測定点の探索に適用することを考案した。ガウス過程回帰は数点の測定結果から未測定点における物理量をベイズ推定することができる。推定値はガウス分布に従うため平均と分散を持っており、分散の大きな点を次の測定点とすることで推定精度が向上する。本研究では推定値の平均と分散を用いて測定点の探索を行う手法を開発する。本研究では中性子共鳴吸収分光法による密度や温度のスキャン測定にガウス過程回帰による効率的な測定手法を適用することを検討している。計算機上でスキャン測定をシミュレーションし、測定点の探索アルゴリズムの検討を行った。ベイズ最適化で利用されるいくつかの獲得関数と本研究で考案した関数との比較を行ったので、その結果について報告する。また、本手法による測定を実施するための測定システムの開発状況についても報告する予定である。
元川 竜平; 熊田 高之; 中川 洋; 上田 祐生; 関根 由莉奈; Micheau, C.; 杉田 剛; 大場 洋次郎*
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研究用原子炉JRR-3に設置される中性子小角散乱装置(SANS-J)の最近の高度化・更新、及び、測定例を紹介する。SANS-Jで重視しているのは装置駆動とデータ取得に関する安定性とユーザビリティの向上である。以前に故障が頻発していた駆動軸の一部廃止や簡素化を行うとともに、エンコーダー付きモーターやGUIを導入して異常個所の早期発見・復旧を可能にし、ユーザビリティを向上させている。最近では、マシンタイム競争率の高い同装置のスループットの拡大および性能向上を主眼にした改良を進めている。フライトチューブの手前にHe二次元検出器を導入して、以前から要望が高かった1nm Q 7nmの波数領域を効率良く測定できるようにした。また、既存の中性子集光レンズを用いることで、試料-検出器間距離10m位置での入射中性子ビーム強度を3倍に引き上げることに成功した。今後は、超小角散乱測定用フォトマル検出器をフラットパネル検出器に置き換える等の変更を計画している。
栗原 和男*; 河野 史明*; 清水 瑠美*; 田村 格良; 玉田 太郎*
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量子科学技術研究開発機構が保有する中性子回折装置BIX-3, BIX-4(JRR-3炉室内設置)は、水素原子や水和水を直接観察した構造情報から、タンパク質の機能発現に必須なプロトン化状態の観察などで成果を上げてきた。さらに本装置を高度化することで、試料対象や回折データ測定可能領域を広げ、より普遍的な手法としての今後の発展が期待できる。BIX-3では装置仕様分解能をサブまで随時拡大可能にするため、従来の弾性湾曲Si(111)結晶に加えて短波長用Si(311)結晶(=0.81に遠隔で切替可能な二段式モノクロメータを導入し、高電位鉄イオウタンパク質(HiPIP)結晶から世界最高となる0.9分解能の中性子回折データセット取得に成功した。BIX-4ではJRR-3ビームホール・冷中性子ビームライン(C1-3ビームポート)に2023年度運転開始までに移設・改造を完了し、各格子長が最大160の試料結晶も測定可能な装置とする予定である。これにより、測定対象を既報X線結晶構造数の約3/4までに拡張することを目指す。本発表では高度化の詳細及び前年度のBIX-3によるその他の測定結果について報告する。
原山 勲; 栗田 圭輔; 飯倉 寛; 土川 雄介; 甲斐 哲也; 篠原 武尚; 松林 政仁; 大平 直也*; 伊藤 大介*; 齊藤 泰司*
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研究用原子炉JRR-3では、2種類の中性子ラジオグラフィ装置を運用している。TNRF(Thermal Neutron Radiography Facility)は広い照射野(縦305mm横255mm)と高い中性子束(1.010n/cm/sec)が特徴である。そのため、短時間でのCT(Computed Tomography)や高速動画撮像に有効である。一方、CNRF(Cold Neutron Radiography Facility)の中性子束は1.710n/cm/secとなる。TNRFに比べコントラストの高い画像が得られ、物質の密度差を詳細に調べる際に有効である。TNRFでは主にZnS/LiFの蛍光コンバータとカメラを用いたシステム、CNRFではイメージングプレートを撮影で用いる。TNRFの空間分解能は、冷却CCDカメラ(Andor製iKon-L 936)を使用して視野を70mm70mmに調整した場合、約200mであった。CNRFではイメージングプレートを用いた場合、約80mである。いずれの装置も外部利用者の研究課題を広く募集しており、本年度採択された課題件数は、現在TNRF: 24件、CNRF: 6件である。本発表では、外部利用者受け入れ状況の詳細や、最近の装置設備や装置性能、撮像例について紹介する。
原田 正英; 山口 雄司; 河村 聖子; 古府 麻衣子; 楡井 真実; 羽賀 勝洋; 奥 隆之; 松浦 直人*; 日下 勝弘*; 杉山 晴紀*
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J-PARCの物質・生命科学実験施設(MLF)では、水銀ターゲットに3GeVの陽子ビームを入射し、核破砕反応で発生する中性子を実験装置に供給しており、2023年6月現在、陽子ビーム出力800kW運転を行っている。中性子実験装置に共有される中性子の強度は、実験装置の性能を決める重要な要素である。これまで、中性子強度測定では、He-3カウンターや金箔放射化法での測定を行ってきた。その中で、空間分布と絶対値との両方を精度よく測定することが課題であった。この問題を解決するために、熱中性子に対して、大面積金箔放射化法を提案した。本発表では、大面積金箔放射化法の手法説明を行うともに、BL02、BL03、BL14での中性子強度及び分布測定に適用した事例を報告する。
奥冨 敏文*; 勅使河原 誠; 原田 正英; 大井 元貴; 山口 雄司; 倉本 繁*
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J-PARCの大強度核破砕中性子源の熱中性子吸収材としては、材料の共鳴吸収を組合せることで、高い中性子カットオフエネルギーを実現できる銀/金-インジウム-カドミウム(Ag/Au-In-Cd)合金を使用しているが、近年Cdを用いた材料製作が困難になっている。我々は、新たな熱中性子吸収材として1/v型で高い中性子カットオフエネルギーが期待できるホウ素(B)に再度着目した。Bは、B(n、)Li反応により生成したヘリウム(He)が材料脆化を引き起こすため、大強度中性子源では使用が困難とされてきたが、He生成の生じないガドリニウム(Gd)等、別の熱中性子吸収材を混在させることでBの中性子吸収を抑制し、脆化を軽減するとともにBの高い中性子カットオフエネルギーを生かす、プレデカップリングと呼ぶ概念を考案した。本研究では、プレデカップリングの概念に基づき、母材であるアルミニウム(Al)中に炭化ホウ素(BC)と酸化ガドリニウム(GdO)を分散させた材料開発に着目した。今回、Al中にBC、GdOを分散させた材料をAlの粉末焼結を用いて試作し、その材料において引張試験を行い、機械的特性を調査した結果及び今後の展望について報告する。
柴山 由樹; 諸岡 聡; 徐 平光; 菖蒲 敬久
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構造部材内部に存在する残留応力は水素脆化割れの原因となる。したがってその耐久性を決定する上で重要な役割を持つ。我々は、さまざまな変形モードによって引き起こされる残留応力の多軸性に注目した。残留応力の多軸性を表すパラメータ:応力三軸度を用い、幅広い応力三軸度を示す新たな引張試験手法を開発した。本報告では、1GPa級マルテンサイト組織鋼を用いて開発した引張試験中の応力形成過程と平均応力三軸度について中性子応力測定と有限要素解析を用いて検証したので報告する。
坂佐井 馨; 中村 龍也; 藤 健太郎
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J-PARC物質生命科学実験施設(MLF)の共用ビームライン等で利用できる位置敏感型中性子検出器の1つとしてホウ素塗布型パネル検出器を検討している。今回、J-PARC MLFのBL10にてパルス中性子によるビーム実験や中性子散乱実験を行った。実験ではHe検出器との比較を行うと共に、極めて良好な位置直線性、少なくとも40kcpsまでの計数率等を確認した。また、Niロッドを用いた中性子散乱実験を行い、その回折ピークが明瞭に確認できた。発表では実験の詳細な結果及びPHITSを用いたモンテカルロシミュレーションの結果について報告する。
小田 隆; 井上 倫太郎*; 守島 健*; 會澤 直樹*; 大井 里香*; 石野 良純*; 奥 隆之; 佐藤 衛*; 杉山 正明*
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複数のドメインと天然変性領域から構成されるマルチドメインタンパク質の柔軟な構造は、機能に密接に関連している。しかし、その柔軟性のため、従来の構造生物学的手法による解析が困難である。我々はX線小角散乱と計算科学を用いてHefの動的な構造をアンサンブルとして解析したが、複数のドメインと天然変性領域からの散乱を含む1本の散乱プロファイルのみでは正しい構造アンサンブルの算出には不十分である。これを解決するためにタンパク質の特定の領域の構造情報を選択的に取得する手法の開発を行った。特定の領域のみを75%重水素化し、残りの部分は軽水素体のHefを調製し(区分重水素化Hef)、100%重水中で中性子小角散乱測定を行った。これにより75%重水素化ドメインは散乱的に不可視化され、軽水素体部分のみの散乱を観測でき、X線小角散乱データと相補的に解析することで柔軟な構造の解析が可能になる。本手法は様々なマルチドメインタンパク質の動的構造解析への応用が期待できる。発表では区分重水素化試料の調製、中性子小角散乱測定および予備的なデータ解析について報告する。
田端 千紘; 金子 耕士; 芳賀 芳範; 今 布咲子*; 日比野 瑠央*; 太田 玖吾*; 松本 裕司*; 網塚 浩*; 中尾 裕則*
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ハニカム層状構造化合物UPtGaは、Uイオンが形成する擬六方対称のハニカム層が、乱れを伴って積層した結晶構造をとる。単位格子は面内方向に変位した2枚のハニカム層を含み、この変位によって六回回転対称が破られるため、結晶構造は直方晶で記述される。しかしながら、120ずつ回転した3ドメインが積層乱れを与える形で混在するために、バルクの単結晶は見かけ上の六回回転対称を有している。積層乱れに加え、2枚のハニカム層間の距離が比較的大きいことから、2次元的なハニカム磁性体の観点から興味が持たれる本系について、その低温磁気秩序を共鳴X線散乱と中性子回折によって調べた。実験の結果、六方晶表記においてq=(1/6, 1/6, 0)の伝搬ベクトルで記述される磁気反射をTN=26K以下で観測した。この磁気秩序は、積層方向の相関距離が短い異方的な磁気相関長で特徴付けられ、層間の磁気相関が比較的弱いことが示された。さらに、中性子回折強度の半定量的解析と群論的考察から磁気構造を決定し、ハニカム面内の交換相互作用のフラストレーションが主要な役割を担っていることを明らかにした。
梶本 亮一; 中村 充孝; 稲村 泰弘; 蒲沢 和也*; 飯田 一樹*; 池内 和彦*; 石角 元志*
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四季はJ-PARC・MLFのビームライン01(BL01)に設置されている、数meV数100meVのエネルギー領域を飛行時間法で測定する直接配置型非弾性散乱装置である。その中分解能・高測定効率という特徴を活かして、超伝導体、量子スピン系、フラストレート磁性体、熱電物質等のスピン・格子・原子ダイナミクスの研究に用いられている。最近の高度化として、大型真空散乱槽のための真空制御系の自動化、ディスクチョッパーの高速化、ボトムローディング冷凍機およびクライオファーネスの導入、新しい検出器用電気回路の導入試験、ソーラーコリメータの導入、IROHA2の更新等を行った。また、運用面では、利用のさらなる拡大を目指して2022B期よりFast Track Proposal課題の受入れを始めた。本発表ではこれらの利用・高度化状況の詳細を紹介する。
金子 耕士; 田端 千紘; Frontzek, M. D.*; 松田 雅昌*; 大石 一城*; 伊藤 孝; 宗像 孝司*; 鬼柳 亮嗣; 垣花 将司*; 辺土 正人*; et al.
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トリリウム格子化合物EuPt(=Si,Ge)は、磁気スキルミオンの典型物質MnSiと同じ空間群に属し、有限磁場・温度のみで存在する特異な磁場誘起秩序相をもつ。巨大なホール抵抗に加え、中性子・共鳴X線による研究から、この磁場誘起秩序相において磁気スキルミオン格子が実現していることを報告した。MnSiなどのd電子系と比べ、1/10程度の極めて短周期であることに加え、強い印加磁場異方性の存在など異なる特徴を有していることから、新たなメカニズムによる形成が示唆されている。最近Gd化合物を中心にf電子系での磁気スキルミオン化合物が相次いで発見され、短周期など共通する特徴が見出される一方で、EuPtXでは印加磁場方向により、ホール異常を伴う複数の磁場誘起秩序相の存在や、立方晶としては極めて低対称の秩序波数(=(0.09, 0.20, -0.28))など、固有の特徴が見出されている。今回、磁場誘起秩序相について、単結晶中性子回折、小角散乱を駆使し、異方性を中心に調べた結果を報告する。
中島 健次; 脇本 秀一
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J-PARCの物質生命科学実験施設(MLF)とJRR-3は、どちらも我が国が誇る高性能のパルス中性子源、及び、定常中性子源である。この2つの施設は共に日本原子力研究開発機構・原子力科学研究所キャンパス内に僅か800mの距離を隔てて所在し、我が国は性質の異なるこれら2つの大強度中性子源を組み合わせた中性子利用が可能となっている。この発表では、中性子利用者に向けて、両施設の特徴や、連携の試み、両者を利用した様々なプロジェクト等について紹介する。
Harjo, S.; Gong, W.; 川崎 卓郎; Naeem, M.*; He, H.*; Wang, X.-L.*
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5元系CrMnFeCoNi高エントロピー合金を77Kで引張変形させると強度増加のみでなく伸びが増加したことが発見されて以来、高エントロピー合金の低温変形挙動に関する研究が重要なトピックスの一つとなった。変形挙動を理解するためには、低温下での機械的特性試験を行うと同時に、内部組織変化も調べて機械的特性変化との関連性の理解が必要である。今までの内部組織観察は、変形試験の前・後において、もしくは、変形試験の途中に中断して、顕微鏡を用いて行われたことは多く、全体の機械的試験の範囲をカバーすることができなかったり、観察領域が狭く試験片全体を代表した情報が得られなかったりすることはしばしばある。J-PARCのTAKUMIは、15Kの温度領域下での変形試験が行える周辺環境装置を完備し、その場中性子回折実験を行うことで、低温下の機械的特性を得ながら回折測定で内部組織変化を同時に調べることができる。得られたCrMnFeCoNi、CrFeCoNi及びCrCoNiの高・中エントロピー合金の低温変形挙動について紹介・比較する。
Harjo, S.; Gong, W.; 川崎 卓郎; Mao, W.; 伊東 達矢
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J-PARCのMLFに設置されたTAKUMIは、材料工学や機械工学に関わる材料研究のための飛行時間型中性子回折装置である。中性子回折パターンに表れるBragg反射の位置・強度・プロファイルを詳細に解析することで、材料の内部応力・相比・転位・集合組織など、新材料の設計や構造物の信頼性評価に役立つ様々な情報を得ることができる。中性子回折法はこれらの情報の、ex-situ及びin-situ観察に適しており、工学材料研究のための強力な手段である。本発表では、2022年に公開されたTAKUMIを用いた研究成果からハイライトなものを抜粋して紹介・議論する。
鬼柳 亮嗣; 大原 高志; 中尾 朗子*; 宗像 孝司*; 石川 喜久*; 森山 健太郎*
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SENJUはJ-PARC MLFに設置してある中性子単結晶構造解析装置であり、白色の中性子と広い立体角をカバーする41台の検出器により、逆空間を非常に効率よく測定することができる。そのため、非常に多くの反射を測定し構造解析を行うことができる。構造解析を精度良く行うには、できるだけ多くの良質なデータを入力する必要があり、不良データは破棄する必要がある。しかし、SENJUで測定されるデータは大量であるため、全てのデータを一つひとつ手作業でチェックし選別するのは難しい。これまで、データチェックを自動で行うための方法として、「教師あり学習」や「Autoencoder」を用いた方法などの検討を行っている。今回は、Autoencoderを用いた方法に改良を加えたので報告する。Autoencoderを用いた方法では、Autoencoderを用いて再構築した反射プロファイルの再現性によりデータの良し悪しを判断する。「再現性」の指標として、これまではユークリッド距離のみを用いていたが、コサイン類似度も同時に採用することとした。2次元の尺度空間でデータを選別できるようになったため、より精度良くデータの選別を行うことが可能となった。
稲村 泰弘; 伊藤 崇芳*
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「空蝉」はJ-PARC, MLFにおける中性子散乱用データ処理・解析可視化環境の一つであり、多くのビームラインで導入されているデータ処理ソフトウェア群である。最近の開発トピックとしては単結晶の非弾性測定に関わるソフトウェア高度化が挙げられる。単結晶非弾性散乱測定で多用される回転測定(試料方位を回転させてより広い運動量空間を測定する手法)による測定データの処理をより簡便にし、さらに連続的に試料方位を回転させる測定手法にも対応した新しいソフトウェア(D4Mat2Slicer)を実用化させた。また実際の装置での測定によりどのようなエネルギー運動量空間を可視化できるかをMLFへ来所する前に確認できるようにWebツールを開発し公開している。
樹神 克明; 井川 直樹; 生田目 望; 佐々木 未来; 下条 豊
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HRPD (High Resolution Powder Diffractometer)は日本原子力研究開発機構が所有する角度分散型の粉末回折装置で、JRR-3炉室内のビームポート1Gに設置されている。64本の中性子検出器が2.5度間隔で配置されており、5-162.5度の範囲の粉末回折データを得ることができる。通常使用する入射中性子の波長は1.82で、波数領域にして0.3 Q 6.8 に対応する。最高分解能になる測定条件では、回折ピークの半値全幅を約0.2度まで抑えることができる。利用可能な試料環境装置として、4K冷凍機(4K室温)、真空電気炉(室温1100K)、室温用試料交換機が整備されている。ポスターでは装置の詳細やHRPDで得られた実験データ、これまでの主な利用例を紹介する。